本職がお伝えするお話
2024年01月27日

本職がお伝えする雨樋の詰まりやその他のトラブルについてのお話

普段天気の良い日には気にならないものですが 雨が降ると気になるものの一つに「雨樋のトラブル」が有ります。この雨樋のトラブルは大きく分けて「雨樋の破損など本体の構造のトラブル」で雨が落ちてくるケースと「落ち葉や堆積物による詰まり」で雨水の流れが阻害されて雨が落ちてくるケースの2つが有ります。

今回は破損以外の「雨樋の詰まりやその他のトラブル」について実際の経験に基づきチョッとお話したいと思います。

 

雨樋に詰まりやすい物とは

雨樋に物が詰まると雨の流れが阻害され、雨のたびに上からボタボタ落ちて不快なだけではなく、下の屋根に直接落ちる場合などはそれが雨漏りの原因になることも有ります。

雨樋に詰まるもので良く有るのが「落葉」です。立地状況にもよりますが基本的に屋根より高い樹が近くにある場合は落葉による樋のつまりが発生しやすい状況にあるといえます。

落葉にはケヤキなど葉の大きな広葉樹と松などの針葉樹が有ります。広葉樹の葉は風などによく舞い、濡れると屋根材や軒樋の中に張り付きますが一枚の葉自体が割と大きい為、掃除自体は割と容易に取れます。針葉樹の場合、特に多いのは松の葉で飛んで来るというよりは上からバラバラと降ってくる感じです。先が細い為、瓦屋根やカラーベスト葺屋根材のいろいろな隙間に入り込みますし、多くの場合、雨樋に入り込んだ場合も除去に手間が掛かります。

周りを樹で囲まれた物件、例えば山荘などでは初めから雨樋を付けない前提で設計される場合も有りますがその場合は「軒(のき)」と呼ばれる屋根の先端を長くし、建物から遠く離し かつ、雨の落ちる位置にあらかじめ排水溝を設置して落ちた雨水が建物に及ぼす影響を減らす工夫をされているケースも有ります。

多くの場合は落葉だけが詰まる訳ではなく、それに大気中の土埃などが流れてきたものがこびり付く為に大きな蓋となってしまいます。

また公園の前など立地条件によっては子供が遊んだボールなどが入り込むこともありますし、最近では少なくなりましたがバトミントンの羽根(シャトル)が詰まっていたりすることも有ります。カラスなど鳥がどこかで咥えてきたと思われる生ゴミが詰まることも有れば ベランダで洗濯物を干される場合、その床面の排水を壁面や軒裏面に受マスを取付け排出すのですがこの中に洗濯ばさみが知らない間に入り込み、それが元で詰まりを起こし受マスから排水があふれ天井に漏れるケースも有ります。

 

落葉に対して「落ち葉除けの網」は有効か

落葉が雨樋、特に軒樋に溜まらない様に(入らない様に)網を取付けて欲しいというご依頼をよく聞きますが私の経験上、網の取付はデメリットの方が多いと考えます。

一般的に言われている網を取付けるメリットは単純に「軒樋に落葉などが蓄積しにくくなり、そのまま呼樋竪樋へのつまりを防止できる」というものです。しかし私の経験では網を取付けた事によるデメリットとして「結局掃除をしないで済ませられる メンテナンスフリーなものは無く、樋内掃除のたびに屋根という高所で網の脱着手間が増えるだけ」という事になります。

家庭内の風呂場の排水溝や洗面台の排水口に付いている網(ヘアキャッチャー)を思い浮かべて頂けると分かりやすいと思います。ヘアキャッチャーが付いていることでその先の排水管の「詰まり」は抑制出来ますが、これも定期的に清掃しないと風呂場や洗面台は髪の毛がヘアキャッチャーに絡まり、排水口が詰まって排水に時間が掛かるようになり、やがてプール状態になります。

雨樋の場合ですと軒樋に落ち葉除けの網を取付けることでその先、つまり呼樋や竪樋、這樋が詰まる事を抑えられる、という事です。決して「軒樋が詰まらない」訳では無く、定期的な除去掃除は必要になります。その際、風呂場の排水溝の様に1か所だけではなく、10mや20mという軒樋の長さ分の網を取り外すのはかなり面倒な作業です。しかも簡単にワンタッチで脱着出来る物などなく、ほとんどが風で飛ばない様に針金や結束バンドなどで固定されていますのでその手間は大変なもの、あるいは屋根上からでは実質的に不可能ということも多々有ります。また取付けてから長期間そのままの状況では網の中で種が発芽し、網と絡み合ってさらに大変なことになる場合も有ります。

その為、軒樋全般ではなく呼樋の部分のみというピンポイントのみ網を付ける場合が有ります。この場合は軒樋は落葉が溜まるものと考え、その先の呼樋、竪樋の詰まりだけを防ぐ目的で目の粗い網を加工して取付けますので軒樋全般に取付けるより後々の脱着は簡単ですがやはり「網」が有る以上、前記の風呂場の排水溝の様に定期的な清掃は必要になります。

樋の掃除をされる場合に最近では「ブロア」と呼ばれる小型の携帯用送風機を使用される方が多くいらっしゃいます。強い風量で落葉等を吹き飛ばしてしまい、後から下に落ちた物を掃除するという方法ですがこれも注意すべきことが有ります。

軒樋に溜まった落葉などは湿気を含み、溜まった泥などで黒く汚れている場合が多く、これを強い風量で吹き飛ばした場合、下に屋根が有る場合は下の屋根や壁が汚れたり、飛ばす先が自地に落ちる場合は良いのですが隣家が近い場合は隣家、隣地に飛んでいく場合も多々あり、近隣トラブルのもとになります。そのような場合は出来るだけ 少々手間が掛かりますが手でつかみ取り、その場で袋に詰める方が良いです。

さらに蓄積物の除去後に目では見えない呼樋内や竪樋に水を流し詰まりがないかを確認する「流水確認」をした方がより確実です。

 

その他のよくある雨樋のトラブル

古い木造住宅や、和風建築で軒の出が大きく作られた建物では経年で木にそりが発生し、本来水平であるべき屋根の先端が傾いてしまう事が有りますし 地盤沈下などで建物自体が僅かに傾くことも有り、それにより軒樋の傾きが変わり本来流したい方向とは反対の逆勾配になり軒樋から雨水が落ちることが有ります。

水は高い所から低い所へ流れますので軒樋を取付ける際に、水が流れる様に傾き(勾配)を付けますが寸法的には1mあたり5~7ミリ前後(長さや形状により変わります)とごくわずかな寸法ですので建物の狂いは大きく影響します。

こういう場合よく対処法として下がった軒樋の先端(前側)をグイっと手で持ち上げて直ったとする方がいらっしゃいます。確かに前から見ると軒樋が上がったように見えますが、ほとんどの場合、実はほぼ変わってはいませんので注意して下さい。

アルミ製既成品のベランダ、テラス屋根に付いているの蛇腹形状の樋のちぎれもよくあるトラブルです。

この部材は素材の関係か経年で劣化しやすく、ボロボロになってちぎれてしまいます。多くの場合これらの部材はベランダやテラスの製造メーカーが機種ごとに独自に作らせていて 同じ物は入手しにくい物になっています。

蛇腹形状の部材は誰でも(雨樋の専門業者でない人でも)どんな状況でも(取り回しが難しい状況でも)容易に取付出来る様に考えられた部材で、ホームセンターでも似たような商品は販売しているようですが長さや径などがうまく合わない場合が多いようです。この場合は容易に取付は出来るが劣化しやすい蛇腹形状ではなく、取付方法など特殊な技術が必要になりますが 径の少し小さな「ちゃんとした」竪樋を取付けた方が後々のトラブルを減らせます。

またこのアルミ製テラス屋根の先端から雨が漏れる場合もよく有り、経年などでこのテラス屋根自体に傾きが発生したり、土埃などが蓄積して小さな排水口が塞がれた場合に端部より漏水します。

前記の様に通常建物の屋根先端に付けられる軒樋は、水を流したい方向へわずかに勾配を付けて取り付けますが既製品のアルミ製屋根の先端部に付けられた「水受け部」はその様な勾配は付けられていません。それは受けた雨水を右側に流したいのか左側か、あるいは中央かと現場の状況がそれぞれ違うために製品自体に勾配を付けられないからですし元々「テラスの屋根材を受けるための構成部材」として作られている物で「軒樋」として作られたものでは無いからです。容量的にも小さいので感覚的には雨水を流す(受ける)機能はおまけ程度に付けられたものと考えた方が良いです。

この場合、見た目を気にしないのであればテラス屋根の先端下部に漏れる水を受ける軒樋を取付け、竪樋で流すという「建物用の雨樋取付方法」を施すことで確実に雨水を排水することが出来ます。

 

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