用語解説
2023年08月18日

よく使われる屋根に関する用語解説

屋根の説明の時によく使われる屋根の各部名称や屋根の形状を写真を交えて解説したいと思います。

但し地域や職人さん、販売しているメーカーによっては独自の呼び名を使うことも有ります。

 

ケラバ

屋根の横の部分。

屋根材を固定する為に屋根材本体の施工前に取付ける部材で屋根材のケラバ部分と屋根下地(破風板)との隙間から雨水が入らない様にカバーする部材を「ケラバ包み」と呼びます。

使用屋根材により 形状が変わります。

通常の場合は屋根に傾き(勾配)が有る為、雨水は上から下、つまり軒先方向へ流れますので裏面に雨水がまわることはあまり有りませんが 、カラーベストなどの屋根材の場合は この部材と屋根材のわずかな隙間に少量の雨水が流れる構造になっていますので特に注意が必要です。

また強風時には風の影響を受けますので固定方法、使用材料の寸法にも注意が必要で、むやみに大きなケラバ包みを取付けるとかえって風であおられ逆効果になります。

 


棟(むね)

屋根の一番頂上の部分です。

使用屋根材により形状が変わります。

この棟をカバーする板金部材を「棟包み(むねつつみ)」と呼びます。

また屋根形状による使用箇所により名前が変わります。

切妻屋根(後記)など屋根の一番高い所に水平に取り付けられた棟を「陸棟(りくむね)」、寄棟屋根(後記)の斜めの部分に取付けられた棟を「隅棟(すみむね)」、片流れ屋根(後記)の頂上に取付けられた棟を「片棟(かたむね)」と呼びます。

また屋根の一番高い所に有る為、屋根に小面積の穴を開けることで屋根裏の熱気を排出する「換気棟(かんきむね)」も最近ではよく使用されます。

 


谷(たに)

2つの屋根面が交差する部分にできます。

2つの面の雨量が集まる為 トラブルが起きると大きな雨漏りに直結します。

ここに取付ける部材を「谷樋(たにとい)」と呼びます。

谷樋は多くの場合、瓦や板金屋根材など使用屋根材にかかわらず金属板を加工して取付けますが常に大きな雨量が流れる為、使用材の劣化が起きやすい部分でもあります。

また屋根(建物)の構造上、水平な谷になる場合が有りこれを「陸谷(りくだに)」と呼びます。この陸谷は通常の谷以上に施工、排水経路の確保が難しく、安易な増築やデザイン優先の結果生じた陸谷は非常に雨漏れの原因になりやすいので、出来るだけ避けた方が良い構造です。

どのタイプの谷樋も屋根材の施工前に取付けますので 経年で穴が開くなど交換の必要がある場合、周囲の屋根材も一時撤去、復旧の必要が有ります。

 


雨押え(あまおさえ)

複数の違う面が接する部分を「取合(とりあい)」と呼びます。

壁面と屋根面が接する部分を「壁取合(かべとりあい)」と呼び、壁から流れてきた雨が屋根の下に入らない様に板金等でカバーする部材を「雨押え」、「壁取合水切(かべとりあいみずきり)」とも言います。

使用屋根材により形状は変わります。

この部材の取付に際し、継ぎ手部分から雨水が毛細管現象で吸上げることが有り、雨漏りの原因になることが有るので注意が必要です。

 


破風板(はふいた)

幕板(まくいた)

屋根に厚みを付ける為、屋根の表面と軒裏との間を隠す為に取付ける部材です。

ケラバ側に取付ける物を「破風板」、軒先など水平方向に取付ける物を「幕板」と分けて呼ぶことも有ります。

住宅に限らずプレハブ倉庫などでも屋根や雨樋を見せない様に隠す意味で 屋根から少し離して周囲に取付ける部材も幕板と呼びます。

 


棟違い(むねちがい)

切妻屋根や寄棟屋根の建物で敷地や部屋の配置の関係などで屋根を部分的に一段下げた形状の部分です。

陸棟が位置をずらして複数出来ます。

屋根面、陸棟部分に破風が食い込む様な複雑な形状になる為、この部分からの雨漏り発生リスクが有ります。

 


 

 

片流れ屋根(かたながれ)

屋根面が一枚の板の様に 一方向に傾いただけのシンプルな屋根形状です。

屋根の傾き(勾配)や天窓などの有無にもよりますが シンプルゆえに故障リスクの少ない屋根形状です。 

但し水上部に片棟包みを付けるか否かで雨漏りに対するリスクは変わってきます。

 


切妻屋根(きりづま)

陸棟をはさんで、片流れ屋根を2面合わせた屋根形状です。

片流れ屋根同様、勾配や天窓の有無にもよりますが 片流れ屋根同様 雨漏りなどのリスクの少ない屋根形状です。

 


寄棟屋根(よせむね)

4つの屋根面(それ以上の多面体も有ります)を陸棟、隅棟を使い合わせた屋根形状で多くの建物に使われています。

簡単な4つの面だけの物もあれば8面やそれ以上の面が合わさったものも有ります。

デザインや敷地の関係で多面体になるほど「谷」が多く出来ますし、複雑な形状になるほど雨漏りなどの故障リスクは増えます。

 


 

方形屋根(ほうぎょう)

寄棟屋根から陸棟を取り、角錐にした屋根形状。

板金屋根の場合は頂上部の雨仕舞(雨が入らないようする事)に少し難が有ります。

 


入母屋屋根(いりもや)

寄棟屋根に換気や採光用の開口部を設ける為、屋根の一部を切妻形状にしてその奥に小さな壁面を設けた屋根形状。

和風建築では時々見られますが台風等強風雨時には吹き込みやすく、入母屋内の雨仕舞が複雑になりますので注意が必要です。

 


カマボコ屋根

アール屋根、アーチ屋根とも呼びます。

以前は体育館の屋根などの大型物件、デザインにこだわった一般住宅などに使われていました。

頂上部の屋根勾配がほぼ無くなる為、大型物件では漏水の可能性が有り、また住宅などでも屋根を事前に設計した寸法に湾曲加工しておく必要が有る為 運搬時に難が有り、かつ屋根下地材とのなじみが悪くひずみが発生しやすいなど問題点が多い屋根形状です。

 


 

 

 

晒屋根(さらし)

元々 屋根自体を薄く作り、裏面を化粧の木材を張りそのまま見せる構造の屋根を指しますが、軒裏が見えない瓦葺屋根などで軒先部分のみ銅板などの金属板を葺く形状の屋根も晒葺屋根といいます。

和風建築で屋根が瓦葺の場合、軒の出を大きくすると屋根先端部の重量が大きくなり過ぎる為、屋根の壁などから外に出た部分のみ軽量の銅板で葺くことで屋根軒先の重量負担を減らす為に考えられた構造です。

 


 

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