私が実践している「屋根」という見えない所の工事で安心してもらう方法
私の建築板金と呼ばれる職種は基本的に屋外、それも屋根とかその先端に付いている雨樋などを触る関係で高所での作業をしています。屋根の上という普段、一般の方が見えない場所ですのでそれを利用して過度な表現で不安をあおったり、コーキングという防水用のりで塗り固めただけの工事内容であったり、修理方法にしても不必要に値がさの張る工法のみを勧めたりといろいろトラブルが多いのも事実です。今回は一般の方が「屋根」という高所で普段見ることの出来ない場所での工事を依頼するにあたり、少しでも安心して頂けるように私が実践しているお話です。
なお文中に出てくる屋根や雨樋のの専門用語についてはここで解説しています。
調査時
例えば雨漏りが発生して その調査を依頼されたとしましょう。その場合まず状況を調べる為に屋根に上がることが多くあります。2階の屋根に直接上る場合、「スライダー」と呼ばれる伸縮する長いハシゴを使い屋根に上ります。この時に一番怖いのは(注意すべきことは)このスライダーが人が上がり下がりする過程で横滑りをおこして倒れてしまう事です。また屋根に上がっている最中に風で押されて倒れることもあります。それを防止する為にロープ等で固定をします。ベランダの手すりであったり竪樋であったり可能な範囲でハシゴと結びつけます。ある程度年数の経った建物の場合、屋根の先端に付いている「軒樋」はプラスチックが劣化し割れやすい状況になっている場合が有りますので、可能であれば軒樋の付いていない「ケラバ」と呼ばれる部分にハシゴを掛けた方が新たなトラブルを防ぐことが出来ます。どうしても軒樋に掛けなければいけない場合は「当て板」と呼ばれる部材を使い軒樋の変形、破損を防ぐ様にします。
もし直接2階の屋根では無く、2段構えの屋根構造になっている場合は「下屋(げや)」と呼ばれる1段目の屋根に、テラス、ベランダなど少し広めの場所が有ればそこから脚立(きゃたつ)を伸ばして2階の屋根の先端に掛けます。この場合でも可能な範囲で転倒防止の処置をします。そして一番重要なのは「ヘルメット」を被る事です。よくTシャツ、ノーヘル姿で屋根に上る方を見ますが 危険認知という目で見ればどうでしょう?。
調査直後の現状説明
調査時には必ず写真を撮ります。これには2つの撮り方が有ります。一つは自分の記録用としてのアングルで撮ります。もう一つは施主様に後で状況説明する為のアングルで撮ります。この「後で状況説明をする」というのは非常に重要な点です。また他にも屋根に上がった時にしかわからない注意事項が有ればその写真も撮ります。出来れば当日その場で撮った写真を見ながら大まかな状況説明をさせて頂き、いくつか考えられる雨漏り原因、それの解決方法と問題点が有ればそれもお話させて頂きます。この時に気を付けている点があります。それはなるべく専門用語を使わずにわかりやすい言葉に変えて説明させて頂くという事、それと出来るだけ複数の解決策をご提案するという事です。複数の解決策というのは 解決方法の種類により施工金額が変わってくるからです。住んでいらっしゃる方の年齢や建物の利用状況によっても 修理に掛けられる予算は変わってきます。最低限度 今の漏りだけを止める方法を望まれる方、この際もう少し先までの耐用年数をお考えの方、玄関先や周りからも見える場所である程度見栄えも考慮される方、それぞれのご希望があると思います。その為にも数種類の解決方法をご提案することを心がけています。
それと重要な事は雨漏りならその原因をしっかり把握することです。原因もわからないのに解決策を提案できるわけが有りません。ですがすぐに原因のわからない漏りも数多くあります。その場合は「試験的」な作業で様子を見て原因を特定していく方法をとることもあります。この場合は原因特定までに少し時間が掛かります。
見積時
屋根に上がっての状況確認を基に見積書を作成しますがその際に 先程の状況確認の際に撮った写真を用いて「現状報告書」を作成します。これには調査当日に大まかな説明をさせて頂いたものを書面にして 傷んでいる状況やその他注意すべき点をまとめた写真にコメントを付けた物です。写真点数で言えば10枚以内、まとめたページ数で言えば2~3ページ前後のものですので大したボリュームの物ではありませんが 、現状を画像で確認してもらう事でより施主様が状況を把握しやすいように考えています。また状況にもよりますが より内容をわかりやすくするためにスケッチ図を描くこともありますし、写真に施工範囲などを明記する場合も有ります。
それとコメントにも気を使います。あくまで現状の説明に留め、なるべく不安をあおらないという事です。残念ながら見積書には専門用語を用いる必要がありますので一般の方には内容がわかりずらい点があります。ですがこの「その場での現状説明」「書面での現状報告書」と「見積書」をセットでお渡しすることで、より施工内容を事前にご理解頂ける様に心がけています。
施工後
いくつかご提案した見積内容で施工をさせて頂くのですがその際にも必ず写真を撮ります。屋根の上という基本的に一般の方が見えない所での作業ですので どこをどのように施工したのかを必ず記録します。ただ漫然と「施工前の全体写真」、「施工後の全体写真」ではなく作業中に今回気を付けたポイント、カバー類を取付けてしまうと中が見えない物についてはカバーの取付前の状況、などの施工中の写真も必ず撮ります。
工事完了後それらの写真をまとめて見積時に作成した「現状報告書」同様、「施工内容報告書」というものを作成します。それらの写真を使い 提供できる情報量は必ずしも多くは有りませんが 見えない所の作業だからといい加減な作業をしていないか、というお客様の不安を減らせるように考えています。また施工内容報告書を出すという事は自分の仕事に自信と責任を持つという事にもなります。当店の場合、調査、説明、見積、施工、すべて私が行いますので 営業さんの話と実際施工に来た人の話が違う という事はありません。
まとめ
一般の方にとって見えない場所で、よくわからない専門的な言葉を使い、どんな仕事をしたのかわからない物に結構なお金を払うのは非常に不安に思うでしょう。肝心なのはその業者(施工者)がキチンと状況を判断できる能力を持っているか、対応できるいろいろな知識、経験を持っているか、一般の方に説明できる気遣いと説明力を持っているか、いくつかの選択肢を持って見積が出来るか、これらをみて業者の選定をされるといいと思います。肝心なのは一般の方が安心して任せられる業者になるという施工者の自覚が有るか無いかだと思います。