用語解説
2023年08月08日

よく使われる雨樋の用語解説

雨樋の説明の時によく使わる用語を写真を交えて解説したいと思います。

但し地域や職人さん、販売しているメーカーによっては独自の呼び名を使うことも有ります。

 

雨樋の各部名称について

軒樋(のきとい)

屋根の先端に水平方向に付いている雨樋。

屋根から流れてきた雨を直接受ける部分です。

支持金物を用い屋根の先端部の下地材に留めます。

水平に見えますが 多くは水が流れやすい様に僅かに高低差の傾き(勾配)を設けて取付けます。

一般的にはプラスチック製(正しくは塩化ビニル樹脂製です)のものが大半ですが、夏の高温、冬の低温による寒暖差などで塩ビが大きく伸び縮みする為、樋本体に湾曲が発生したりひどいときは接続部材の亀裂を引き起こしたりします。

その対応策として芯材に金属板を用い、その内外を塩ビで皮膜したサンドイッチ構造の素材で成形した商品を主にしているメーカーも有ります。

形状も以前は「半丸(はんまる)」と呼ばれる半円型が多く使われていましたが最近では、デザイン性を重視した角形形状のものが多く使われ、メーカーや年代により多種多様な形状が有ります。

注意点としては半丸型、角形共、似たようなデザインの軒樋でもメーカーごとに微妙にサイズ、形状が異なりますので部材の互換性は有りませんし、特に角形形状の軒樋は数年ごとに新製品、廃版を繰り返すので古い角形の軒樋の部品交換は出来ない場合が有ります。

和風建築にこだわった建物や旧家などでは銅板を使った軒樋も有り、塩ビ製では出せない「趣(おもむき)」を持ち合せています。

 


竪樋(たてとい)

建物に対し垂直方向に付いた雨樋。

軒樋から流れてきた雨を地面(地中の排水管)に流す部分です。

支持金物で建物の壁などに取り付けますが 軒樋より支持金物の取付間隔は広いのが普通です。

素材は塩ビ製の物が一般的で 形状は円形、角形の物が有りますが軒樋の様に多くのデザインの違いは有りません。

太さも大型物件用の太い物から少量の雨水対応の細い物まで有りますが、住宅に使われるサイズの竪樋は軒樋と同様、表記サイズは同じでもメーカー間の互換性は有りません。

但し工場などで使われる排水管を使った大型の竪樋はJISという工業規格によりサイズが統一されているのでメーカー間の互換性が有ります。

竪樋自体は熱伸縮で湾曲することは有っても、軒樋の様に雨水の流れが阻害されることは有りませんが地面の下の埋まった配水管との接続に注意が必要で、安易に接着剤で直結固定してしまうと地震等地面の揺れと建物の揺れで竪樋が破断してしまうことが有ります。

軒樋同様 銅板で加工した物を使っている場合も有ります。

 


呼樋(よびとい)

軒樋の雨水を竪樋に流す中間部分です。

多くは水が流れやすい様に大きめの角度が付けられています。

軒樋に「上合(じょうご)」と呼ばれる集水ますを取付ける場合と「ドレン」と呼ばれる軒樋の下部から直接竪樋が直結した様に見える部材を付ける場合とが有りますが 共にそこから先は竪樋を使うため、あえて呼樋の名称ではなく単純に「集水器」、「ドレン」、「落ち口」などの名称で呼ぶ場合も有ります。

銅板の樋の場合は「呼樋アンコー」と呼ばれる一体型の物を使うことで和風ならではの「呼樋」を強調したデザインにすることが多く使われます。

 


這樋(はいとい)

2階建ての建物等 上の階の軒樋の水を下の屋根の軒樋に運ぶ竪樋の延長部分です。

多くは竪樋を屋根材に固定して使いますが屋根材によっては固定が難しいケースもあり、強風時に飛散しやすい箇所でもあります。

下の軒樋に雨水を流す為に「エルボ(後記)」を多用し取付けますが 下の軒樋への流し込み箇所が重要で、不適切な位置に流し込むと強雨の時にあふれたりします。

特に下屋根の軒樋の呼樋から離れた場所に取付ける場合は注意が必要です。

 


軒曲がり(のきまがり)

軒樋の曲がり角部分。

曲げる方向により屋根の出っ張った方向に曲げるのが「外曲がり」、「出隅(でずみ)」と呼び、反対に屋根の入組んだ方向に曲げるものを「内曲がり」、「入隅(いりずみ)」と呼びます。

軒樋の熱伸縮による経年劣化で破断を起こしやすい部分です。

また和風建築などでこの部分に「隅飾り(すみかざり)」と呼ばれる飾り物を取付ける場合が有ります。

 


エルボ

竪樋を曲げる為に使う部材です。

住宅用の多くは75°程度の角度が付いた物が多く使われますが45°や90°位の物、自由に角度設定が出来る物など数種類有ります。

住宅用の竪樋に使うエルボには雨水が流れやすいように上下方向が有り、これを反対に取付けると漏水の原因になります

 


飾ります、受ます

ベランダなどの排水用に壁の外側に取付け、竪樋との中継に使う「ます」です。

機能重視で大きな角形のものが一般的ですが 最近ではデザイン重視の小型のものも出ています。

玄関の屋根の下に取付ける、少量の雨量に対応した小型の物を「ポーチます」と呼ぶことも有ります。

また竪樋の道中に横から別の竪樋を合わせる「併せます」という部材も有ります。

「併せます」を使う場合は排水する水量が増えますので そこから先の竪樋のサイズ(容量)を注意する必要が有り、増築等で配水系路確保のために安易に接続、多用すると排水容量オーバーによるトラブルの原因になります。

 


内樋(うちとい)

多くの場合、本来屋根の外側に取付ける軒樋を見せたくない等、主にデザインの観点から屋根の先端部に組み込んだ形の軒樋です。

通常の軒樋と違いメーカーによる既製品は有りませんので、素材も塩ビではなく屋根材と同材で作られる場合が多いのですが 中には耐久性を考慮し、特別にステンレス等を使用する場合も有ります。

デザイン優先の為施工後の問題点が多く、屋根の一部に込みこむので容量的にも十分な大きさが確保出来ない場合や、また本来雨水を流れやすくするために設ける勾配の不足による強雨時の容量オーバーなどトラブルが起きると即 天井裏、部屋内に漏水が発生します。

内樋自体は屋根材施工の前に取付ける為、経年などによる接続部や竪樋との接続箇所のトラブルで内樋を交換の必要がある場合はまず屋根材本体を撤去する必要があります。

 


 

月別アーカイブ