用語解説
2024年02月08日

よく使われる屋根材の葺き方の用語解説

屋根材の葺き方の説明の時によく使わる用語を写真を交えて解説したいと思います。

但し地域や職人さん、販売しているメーカーによっては独自の呼び名を使うことも有ります。

 

〇 屋根材の葺き方、各名称について

竪ハゼ葺(たてはぜぶき)

現在の住宅において非常に多く採用されている板金材を使用した屋根の葺き方です。

使用される材料は耐候性に優れたガルバリウム鋼板が使われることがほとんどで重量も軽く、一般的には1m×1mの面積で5㎏前後と耐震においても優れています。

約30~35センチ前後の間隔で縦方向に 2~3センチ程度の高さの突起状の屋根材の継ぎ目「ハゼ」が通ります。以前は大きな特殊工具を使ってこのハゼを締める作業が必要でしたが 最近はこの工具を必要としない「篏合式竪ハゼ葺(かんごうしきたてはぜぶき)」が主に使われています。

このハゼを利用し専用金具を取付けることで屋根材本体に穴を開けることなく太陽光発電パネルを設置できるため、新築はもちろん、建物のリフォーム時に瓦屋根から竪ハゼ葺に変更するケースも有ります。

一枚の屋根材の長さは自由に設定でき、立地、運搬等の条件が良ければ10mを超える長さでも対応できます。

屋根の勾配(傾き)も非常に緩い勾配から非常にきつい急勾配まで 対応でき、ベニア合板など屋根の下地材にビス等で直接留めます。

 


カラーベスト葺(からーべすとぶき)

「コロニアル葺」「彩色平板スレート葺」などとも呼びます。

セメントを主に各種繊維物を混ぜて作られた 厚みが6~8ミリ程度の平板の瓦材で屋根の合板下地に専用釘を使い直に留めます。

阪神淡路大震災直後に屋根の軽量化と施工スピードの速さなどから、一時大量に採用されました。施工に必要な部材はほとんど既製品で用意され 施工方法もマニュアル化されている為、少しの経験で誰でも扱える商品です。

製造年代により初期の頃の商品では少量のアスベストを含んだ材料が流通していた時期が有りますが現在では全てノンアスベスト材となっています。

 


瓦葺(かわらぶき)

古来より日本住宅の屋根材として使われてきた屋根材で 粘土を型に入れ高温で焼いた屋根材です。

形状も「和型」「平型」「洋型」などが有り、色合いも釉薬(ゆうやく)と呼ばれる上薬を使って色を付けた物や、銀色に仕上がった「いぶし瓦」が有ります。

セメントを使った「モニエル」と呼ばれるセメント瓦も有りましたが耐久性に難が有り、現在では生産されていません。

また近年、軽量セメントと樹脂繊維の混合剤で出来た「ルーガ」と呼ばれる新しい瓦材も出来ています。

以前は瓦の固定方法を粘土に頼った工法が多く用いられていましたが経年でズレやすく、また耐震性という観点から最近では、粘土に頼らず釘やビスでの固定、形状の工夫などで地震や台風でもズレない屋根葺工法を採用しています。

 


一文字葺(いちもんじぶき)

ガルバリウム鋼板や銅板などの板金材をある程度細かく切断して四方を曲げ、「ハゼ」と呼ばれる接続方法でつなぎ合わせて葺く屋根葺工法です。ハゼの中で「吊子(つりこ)」と呼ばれる部材を用い、それを釘やビスで固定します。葺きあがった屋根材が横一文字にスッと通るシンプルですが手の込んだデザインになります。

特に銅板を使ったものは主に和風建築に用いられ、銅の色合いと共に独特の雰囲気を持っています。

切断する一コマの大きさにより「四つ切」「六つ切」「八つ切」などと呼び、数が多くなるほど一コマが細かなものになります。

加工に非常に手間が掛かる為、最近ではある程度大きさを決めた既製品がよく使われるようになっています。

 


平葺(ひらぶき)

板金材を一文字葺よりもっと大きな寸法に切り、ハゼを用いてつなぎ合わせた葺き方です。

基本的にガルバリウム鋼板など使用板金材の製品幅を基に一コマの大きさを決めますので、大体90センチ弱の間隔でハゼ組されることが多く、大きな面積の屋根や壁に付いた窓上の庇などに用いられることが多い工法です。

 


瓦棒葺(かわらぼうぶき)

一見 竪ハゼ葺と同じように見えますが屋根材の継ぎ目である突起状のハゼの部分が一回り大きく、4~5センチ程の幅がある形状で 竪ハゼ葺が流行る前によく使われた葺き方です。

この幅広のハゼ部の中に3.5センチ程度の角材が入った「芯木あり瓦棒葺」が初期の頃の葺き方で、後に改良されて木材の入っていない「芯木無し瓦棒葺」に変わりました。芯木無し瓦棒葺は旧式の竪ハゼ葺同様、このハゼを締める為の大きな特殊工具を使う必要があり、手間、体力が必要で特に屋根の勾配(傾き)が急な屋根では大変手間が掛かります。

 


段葺(だんぶき)、カバー工法

元々は一文字葺などの様に板金材を横方向にハゼ組みによって接続していくのですが、上下間のハゼ部に厚みを持たせて「段付け」し、より立体的に見える様工夫された葺き方です。

しかし最近ではカラーベスト葺屋根の経年対策リフォーム用として、ガルバリウム鋼板によるカバー工法材「横段ルーフ」「ガルテクト」などの名称で販売されている商品を「段葺材」と呼ぶことが多くなっています。

どの商品も既設のカラーベスト材を撤去せず、その上からガルバリウム鋼板の裏面に1センチ程度の厚みの断熱材を張り付けた段葺材を被せ、ビス等で直接屋根下地材に固定する方法で、仕上がった物は上下間をつなぐハゼ部に1センチ程度の段が付いた板金屋根になります。

 


折板(せっぱん)

厚めの板金材を専用の成型機で折り曲げて角の有る波型形状にしたものを屋根に並べる葺き方です。

波型の大きさも数種類あり、大きな波形状の物は工場などの大型物件、小さな形状の物は住宅のガレージや倉庫などに採用されています。

形状的に屋根材としての強度が高い為、竪ハゼ葺などの屋根材の様に下地材が必要なく多くの場合、鉄骨等の骨組みだけで直接折板を並べることが可能ですが 雨音などが共鳴する為 遮音性は落ちます。

 


波板張り(なみいたばり)

板金材は板の厚みにより強度が変わりますが、商品に細かな波を付けること(波付け)で薄い板厚でも強度を持たせた商品が「波板」で、以前はトタン(亜鉛メッキ鋼板)を波付けした製品「鉄板波板」を屋根や壁に張ることが多く用いられていました。

現在ではポリカーボネイドやFRP(繊維強化プラスチック)を波付けした商品を「ポリカ波板」「FRP波板」として採光用に多く用いられています。基本的に商品は「6尺」「8尺」という昔ながらの呼称長さでホームセンターなどでも定尺販売されています。

波の大きさも数種類ありますが、一般的には「鉄板小波」「32波」と呼ばれる一枚当たり20.5の山が波付けされた商品が多く使われています。

 


アスファルトシングル葺

繊維ガラスマットの芯材にアスファルトを浸透、表面に鉱物の砂粒を圧着した商品で接着剤や釘などで固定します。軽量で柔軟性に富んでいる為、曲面などにも使用でき、屋根のデザインの自由度が広い商品です。

浸透させているアスファルトの代わりに不燃材を使用した「不燃シングル」や表面の砂粒に小さな砕石を用いたものなどが有ります。但し年数の経過した商品では表面の砂粒が取れ、中の芯材が露出してしまう事が有ります。

 


 

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